プロ野球の試合後に伝えられる勝ち投手と負け投手。
「あれってどうやって決まるのか?」疑問に思う人も多いはず。実はその決め方は奥深く、長年プロ野球を観戦してきた人でも、意外に思うようなこともあります。
プロ野球の投手にしてみれば、防御率や登板回数などとともに年俸を決める重要な要素の一つである勝敗の決め方について、具体例も挙げながら公認野球規則に基づいて調査してみました!
勝利投手の条件は?勝ち投手の権利の獲得方法
先発投手が完投して、チームも相手より点を取って勝ち投手になるのが最もシンプルなケースですが、途中で降板することも多々あります。
通常試合は9回までですが、降雨等のコールドゲームでは最短5回で試合が成立します。
野球規則では、「先発投手に勝利投手の権利が得られる条件は5回まで投げ切っていることで、5回(6回未満)で試合が終わった場合は4回まで投げ切ること」となっています。
勝利の権利は「自分のチームが決勝点(試合を決定づける得点)を奪った時に投げていた投手に与えられる」というのが『大原則』です。
先発にはそれに投球回数の規定が加えられるということですね。
リリーフピッチャーが勝ち投手の権利を獲得する具体例
(A)先発投手が規定の回数を投げずに降板したが、既に決勝点が入っている時、(B)同点や負けている状態でリリーフピッチャーに代わり、その後チームが得点して勝利した時、それぞれ誰が勝利投手になるのでしょうか?
(A)は、リリーフが1人なら、その投手になります。2人以上出場した時は、「勝利をもたらすのに最も効果的な投球を行った、とNPB公式記録員が判断した1人の救援投手」に勝利の記録を与える、と野球規則には書かれています。
「効果的な投球」の判断基準はまず投球回数、そして失点、自責点や試合の流れや状況なども加味されます。
(B)は『大原則』に従って、決勝点を奪った時に投げていた投手になりますが、投球が1回に満たず、失点もした時は例外もあります。これも記録員が判断します。
勝ち投手の権利がなくなってしまう具体例
リードした状態で先発投手が規定の投球回数以上を投げて降板した時点では、先発投手に勝ちの権利があります。でも、リリーフが打たれて同点にされたり逆転されたら、そこで先発投手の勝ちの権利は消えます。
先発投手が規定の投球回数を投げずに降板した後、リリーフAが投げている時に味方がリードを奪い、勝ちの権利を得たとします。この場合も、Aの後のリリーフBが失点して同点になったり逆転されると、Aの勝ちの権利は消えてしまいます。
没収試合になった場合は、試合を継続できない原因を作った側がリードしていて、勝利の権利がある投手がいたとしても、負けになってしまいます。
ただ、NPBでは1971年の阪急-ロッテ戦を最後に没収試合はありません。
負け投手(敗戦投手)の決め方
ピッチャーが自分の責任による失点で相手にリードを許し、そのリードを味方が途中で同点にしたり逆転できずに敗れたとき、そのピッチャーが負け投手となります。
一度でも同点になったり、逆転すると、その時点でピッチャーの負けは消えます。試合が同点になった時点で、負け投手については「そのときから新たに試合が始まったものとして扱う」と野球規則に書かれている通りに従います。
前述の「自分の責任による失点」は『自責点』と呼ばれ、勝敗を決める大事な要素ですし、投手の防御率を決める数字でもあります。それだけに、少々複雑な取り決めがあります。その一部を以下の例の中でも見ていきましょう。
先発ピッチャーが敗戦投手になる具体例
先発投手の投球回数についての規定は、敗戦投手になる場合にはありません。1回の先頭打者にいきなり本塁打を許し、その後完璧に抑えて9回まで投げ切ったとしても、味方が1点も取れなかったら敗戦投手です。
先発して1-0で勝っている試合の7回始めからヒットを2本打たれて二、三塁となり、ここで降板してリリーフに交代したものの、リリーフもヒットを打たれて2人の走者が帰って逆転され、そのまま負けた時の敗戦投手は誰かというと、逆転の走者を出した先発投手になります。これが自責点で負けになる例の一つです。
リリーフピッチャーが敗戦投手になる具体例
先ほどの例で、先発が許した2人の走者がエラーで出塁していたとすると、ヒットを打たれたリリーフがこの試合の敗戦投手となります。エラーによる出塁は、投手のエラーも含めてその投手の責任にならないという、自責点の考え方のためです。
しかし、一死三塁(走者は投手責任で出塁)で内野ゴロエラーの間に1点が入った時、エラーがなくても得点できたと判断されれば自責点になります。それが決勝点になれば敗戦投手です。判断するのは、やはり公式記録員です。
まとめ
以上、勝利投手/敗戦投手の決め方について見てきました。自責点については、ここに書ききれないくらい複雑で多種多様な例がありますし、勝利投手も含めて公式記録員の判断によるところが多いという点には、意外に思われた方も多かったのではないでしょうか?
試合で残した結果がそのまま年俸や去就に反映される、厳しいプロ野球の世界に身を置くピッチャーにとって、勝敗や自責点は重要な数字です。
ちょっと別の角度から見ることで、プロ野球がさらに面白くなることでしょう!