原辰徳監督の采配の1つに主力打者への送りバントがある。
原監督の采配を語る時に言及されがちなこの作戦だが、具体的にどのようなケースで行われているのだろうか?
- 実際にバントが行われたケース
- バントが行われた局面の検証
- 主力打者へのバントは何を意味しているのか?
このようなポイントについて、探っていく。
原辰徳采配:2019年巨人主力打者へのバント
第2次政権でも村田修一への送りバントなど、主力打者へバントの指示を行なってきた原辰徳監督。
第3次政権でも主力打者への送りバントは躊躇なく行われた。
まずはどんな場面でバントが行われたのかを紐解いていく。
2019年3月30日:坂本勇人へのバント(広島戦)
マツダスタジアムで迎えた広島戦、4-2のリードで迎えた9回表ノーアウト1、2塁の局面で、坂本にバントを命じた。
送りバントは成功し、その後の丸は四球、岡本のショートゴロの間に5点目を奪い取った。
2019年4月21日:ビヤヌエバへのバント(阪神戦)
2-0と2点リードの8回表ノーアウト1、2塁のケースでビヤヌエバにバントを命じたが、結果はダブルプレー。
その回の得点はならなかった。
2019年5月29日:坂本勇人へのバント(阪神戦)
12回表同点で迎えたノーアウト1塁の場面で坂本へバントを命じた。
バントはファールとなり、結果的に坂本は三振に倒れ、得点を奪うことができなかった。
チームはその後、サヨナラ負けを喫している。
2019年7月5日:丸佳浩へのバント( DeNA戦)
東京ドームDeNA戦3-2のリードで迎えた6回ウラノーアウト1、2塁のチャンスで、バントを指示。
バントはファールになり、成功しなかったもののその打席で丸はレフトスタンドへスリーランホームランを放っている。
2019年7月23日:ビヤヌエバへのバント(ヤクルト戦)
5-5で迎えた9回裏ノーアウトランナー1塁の場面で、ビヤヌエバにバントを命じて、相手のエラーを誘った。
その後、重信がサヨナラタイムリーを放っている。
2019年8月17日:ゲレーロへのバント(阪神戦)
1-0のリードで迎えた6回裏ノーアウト1、2塁の場面でゲレーロにバントを命じて、見事に成功。
そのあとは四球で満塁となったが、無得点に終わった。
2019年9月11日:坂本勇人へのバント(DeNA戦)
8回表4-2のリードで迎えたノーアウト2塁の場面でバントに成功。
その後の丸が犠牲フライを放って、リードを広げた。
2019年9月20日:坂本勇人へのバント(DeNA戦)
2019年9月20日のDeNA戦では5-2のリードで迎えた7回表ノーアウト2塁の場面で坂本勇人にバントを命じて成功。
1アウト3塁とした後に、丸が四球、岡本のタイムリー2ベース、阿部の犠牲フライとつながり2点をもぎ取った。
原辰徳采配:2020年巨人主力打者へのバント
2020年も主力打者への送りバントを命じている。
ただ、2020年に関しては主力打者が不調な時期が長かったので、昨シーズンのバントの意味合いと違うことは留意しておきたい。
3割40本をマークした坂本勇人へのバントと2割台前半に低迷している主力打者への送りバントは意味合いが違ってくるのは明白だ。
7月16日:丸佳浩へ2度の送りバント
7月16日は丸佳浩に2度送りバントを命じている。
バントを命じた局面は以下の局面だ。
- 6回1アウト1塁、5-2へのとリード:バント成功で岡本ホームラン
- 9回ノーアウト1、2塁、7-4とリード:バント成功→石川タイムリー
どちらも3点リードの場面で送りバントを命じ、いずれも得点に結びつけている。
8月1日:丸佳浩へのバント
3回ウラ、ノーアウト1,2塁、1-1でファーストにセーフティー気味のバントを転がした。
見事に成功して、相手のミスを誘い、得点に結びつけた。
主力打者へのバントの「主力打者」の定義
主力打者という定義が曖昧あいまいであるが、私の定義ではホームラン20本が狙える打者、外国人打者と言える。
この辺りの定義付けは非常に難しいが、今回は上記の選手をターゲットにして分析を行った。
- 坂本勇人
- 丸佳浩
- ビヤヌエバ
- ゲレーロ
に関してはいわゆる「バントの指示が出しにくい打者」と言えるだろう。
亀井善行も主力打者だと言えるが、ホームランが10本前後なので今回は除外した。
では、具体的にどのようなケースで主力打者にバントを命じているのかを徹底分析していく。
主力打者へのバントが行われるケースを分析
先ほど挙げた主力打者へのバントのケースを振り返っていく。
どのような共通点があるのかをしっかり把握しておくことで、見えてくるものがあるかもしれない。
ビハインド時、主力打者へのバントはほとんどない
主力打者へのバントのケースを見てみると、ビハインドの局面がほとんどない。
この記事で挙げたケースの全てが同点、またはリード局面になっている。
ビハインド局面でのバントは少なく、ビハインド局面でのバントを好んでいない可能性もあると言える。
第二次政権でも、村田修一が甲子園球場で絶妙なバントで内野安打になったのが印象的だが、この時も6回表2-1のリードで迎えたノーアウトランナー1、2塁というケース。
主力打者へのバントを見てみると、ほとんどがリードを広げる時に用いられていることがわかる。
原監督「好調ならバントをさせた」発言
7月23日の中日戦、1-1で迎えた8回表ノーアウトランナー1塁の場面。
打席には2020年シーズン不調だった坂本勇人が打席に立っていた。
終盤の1点が欲しい場面で、バントを指示するかと思われたが、坂本勇人には強打のサイン。
坂本はツーベースを放って、その回一挙5点を奪い取った。
その試合後に、原監督は
「好調だったら、バントさせたかもしれない」
と発言している。
誰もが「不調だからバント」と思いがちだが、原監督はそのような決断をしなかった。
前半戦は相手の予想と違う采配をするケースが多い
- ビヤヌエバにはバントのサインを出しにくいだろう
- 不調な選手は打てないから、バントさせた方がいいだろう
- 小技が利く選手だから、ここはバントだろう
このような予想とは違った采配をすることが多い。
先ほど、2019年4月21日ビヤヌエバのバントのケースを挙げたが、その試合の9回ノーアウトランナー一塁で重信に強行させている。
8回にビヤヌエバにバントを命じて、重信には強行。
ケースが若干違うとは言え、2点リードの9回ノーアウト1塁バッター重信なら、送りバントを命じてもいいケースだ。
1塁ランナー亀井で、それほど足も遅くなかった。
先ほどの坂本の強行の例もそうだが、相手の予想の反対をいくケースが多い。
- 好調だからこそバント
- 不調だからこそ強行
- 外国人選手だからこその仕掛け
- 小兵だから強打
こういった采配が数多くあると、対戦チームもなかなか作戦を予想するのが難しい。
バントが予想される場面でも、1球1球サインを変えるなど簡単にバントをしないこともある。
結論:原辰徳監督主力打者へのバント考察
主力打者へのバントに関しては、様々な見方があるが、現時点で考えられるのは以下の点である。
- 主力打者へのバントは同点かリード時に行われる
- 坂本勇人や丸佳浩ほどの主力打者に関してはほぼリード時のバント(村田修一へのバントもリード時)
- リード時に主力のバント→チームの引き締め効果か?
- ビハインド時は主力の一打に期待する傾向
原監督の采配を一筋縄で語るわけにはいかないが、このような傾向があることがわかった。
主力打者へのバントは原辰徳采配を見る上では、欠かせない要素である。
今後も主力打者へのバントに対する考察を続けていきたい。